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「1q部分重複症候群(1q部分トリソミー/テトラソミーにおける)健康ガイドライン」からの引用です。
染色体とは?
染色体は遺伝情報の発現と伝達を担う生体物質で、1888年にHeirich Wilhelm Gottfried von Waldeyer-HartsによってChromosome(色のついたもの)と名付けられた(染色体の存在を発見したのは Carl Nageli で1842年)。染色体は、細胞分裂期に観察される棒状の構造体を示すが、広義には形態や細胞周期に関わらず、真核細胞にあるゲノムDNAとタンパク質の巨大な複合体を示す場合がある。染色体は、基本的にDNAとヒストンによって構成されている。つまり、ヒトのDNAがヒストンに巻き付いてヌクレオソームを形成し、これが折り畳まれてフィラメントを作りクロマチン線維となる。これがさらに巻かれてソレノイド、さらにスーパーソレノイドとなって顕微鏡で染色体として観察される。染色体は模式図(ideogram)をもとに染色体上の詳細な位置決定を行う(図1)。動原体より短い方を短腕(p)、長い方を長腕(q)という。動原体から端の方を遠位、動原体側を近位といい、動原体から遠位端(テロメア)に向かって、1, 2, 3—と番号が振られている。ヒトの遺伝子はDNAからできているので、染色体変異があり、その結果、染色体の過不足があるということは遺伝子の量的変化を来すことになる。
染色体を調べる時、コルヒチン等の薬剤で細胞を処理し細胞分裂をM期(分裂期)で停止させてからギムザ等の染色を行い、凝縮した染色体の数と形状を観察する。これを撮 影して染色体を順番に並べたものを核型(カリオタイプ)と呼ぶ(図2)。
ヒトの染色体は22対の常染色体(1-22番)と1対の性染色体(女性はXX, 男性はXY)の併せて、計46本が通常である。各番号の染色体は父親と母親からそれぞれ1本ずつ受け継いでいる。ヒトの染色体が46本を基準にしていることが分ったのは比較的新しく、Tjio & Levanが1956年に報告した。
染色体の異常としては、数の異常と構造異常に大別される。数の異常としては、倍数性と異数性がある。倍数性とは、通常46本(23本の2セット(二倍性))に変化を生じ、三倍体(染色体数 69)や四倍体(染色体数 92)などがある。異数性は1個または数個の染色体が増加したり減少したりする状態である。構造異常は、何らかの原因で染色体の一部分が欠失したり、他の染色体との間で組み換えなどが起こり、本来と異なる形態に変ることを言う(図3)。これはDNA鎖の切断とそれに続く修復の際の間違った再結合によって起こると考えられる。種類としては、欠失(染色体末端を含む部分、又は腕の中間の一部を失ったもの)、相互転座(2つの染色体で動原体を含む部分と、他の染色体の動原体を含まない部分が結合したもの)、ロバートソン転座(2つの端部動原体型染色体(13, 14, 15, 21, 22番染色体)が動原体の極めて近い部分で組み換わるか動原体融合によって両腕を持つ1個の染色体になったもの)、逆位(1つの染色体の2ヶ所で切断が起こり、それぞれが互い違いに再結合したもの)、環状染色体(1つの染色体の2点で切断が起こり、それぞれが結合して環状になったもの)、挿入(染色体の一部分が他の染色体の中に組み込まれたもの)、同腕染色体(染色体の一方の腕、または同じ染色体部分を長腕と短腕に持つ染色体で、両腕の長さが完全に等しい状態になっている)、二動原体染色体(2つの染色体で切断が起こり、動原体を含む染色体どうしの結合によって起こる)、脆弱染色体(ある培養条件の下で作製した染色体標本で、染色体の同一部位に一定頻度で狭窄あるいは切断様に見えるもの)がある。
他にも「遺伝」や「染色体」や「遺伝カウンセリング」など様々な情報は信州大学のHPでも確認することができます。興味のある方はご覧ください。