◇1q部分重複症候群の説明へ ⏎
「1q部分重複症候群(1q部分トリソミー/テトラソミーにおける)健康ガイドライン」からの引用です。
どんな症状なのか?
◇症状の詳細と染色体変異との関係
1q重複部分の領域と症状を整理していくと下記のようになる。上述した文献的情報とは、染色体の詳細さが異なるなど一概に比較することが難しい。ただ、多くの患者は、1番染色体重複のみでなく他の染色体の欠失も混じる、いわゆる不均衡転座を伴っている。更に、同じ染色体の同じ領域の異常であっても、合併症やその重症度は患者によって異なる。
◇1q端部重複症候群(表1)
重複部位が大きいほど、臨床症状が強く合併症も多くなる傾向がある。1q32.1より遠位部位の重複は様々な部位を切断点として重複が起こるようである。1q32.1より近位側からテロメアまでの重複はモザイクのみであり、より重症度が強いと思われる。諸外国の奉告では、1q23または1q25からテロメアまでの重複は4例以上知られているが全員が早期に亡くなっている。1q32からテロメアの重複は25例以上の報告があるが、それでも少なからずの方が亡くなっている。一方、1q42からテロメアの重複は、生命予後的にかなり良くなると報告されている。おそらく、1q端部重複に関しては、その重複部位が1q32より近位かどうかで生命予後に大きな影響を与える可能性がある。
重複幅が最も小さな1q43からテロメアの重複では、逆三角形の顔貌と伴に、眼裂斜下、眼裂解離、眼瞼下垂、外斜視、遠視性乱視等の眼科的所見、高口蓋や小顎症などの口部の異常、耳介低位、耳介変異や難聴の耳鼻科的所見、水頭症を含む脳内異常、四肢の整形外科的異常を示すものの、先天性心疾患、呼吸器疾患、消化器疾患や泌尿器疾患は少ないと思われる。精神運動発達遅延は認められる。重複幅が1q42からになると呼吸器疾患や消化器疾患についても考慮が必要になると思われる。諸外国の報告では、心疾患や腎杯拡張の報告もあることから、全体的なチェックが必要ということかも知れない。更に重複幅が1q41まで含まれてくると、先天性心疾患、肺炎反復など呼吸器疾患や泌尿器疾患の合併頻度がかなり多くなることが危惧される。1q32まで含まれるようになると脳内異常、呼吸障害、心疾患など生命予後に関係する合併症の頻度が増加する。
◇1q中間部重複症候群(表2)
我々の症例は1q42,1からq32.3のトリソミーとq41のテトラソミーの症例を示した。2名とも生命予後的には重篤ではないが、テトラソミーの症例の方が若干重複幅が狭いにも関わらず、合併症が多い。量的効果がどれだけ関係するのかは不明である。それより、近位の重複は、その重複幅の大きさが関係するのかモザイクが多い。1例q12からq23の重複症例は、眼科的異常、先天性心疾患(ファロー四徴症)があるものの、他の合併症はさほど多くなかった。ただ、敗血症で8ヶ月に死亡している。文献的には、1q21.1微小重複と1q25からq32トリソミーが知られている。1q21.1微小重複症候群は、発育(身長)は正常のことが多いものの知的障害を伴う。頭囲は大きめのことが多く、心室中隔欠損症、尿道下裂、脳内異常(脳梁低形成、小脳虫部低形成)、とともに自閉性障害などの精神障害が認められる。1q25からq32トリソミーは7例の報告があり、生命予後はさほど悪くない症例も知られている。ただ、モザイクが多いということは、やはり、生命予後が必ずしも良くないことを示すかも知れない。