本日、2016年2月7日 長崎大学にて第9回ダウン症トータル医療ケアフォーラムが開催されました。
第1部:家族の思い
川口靖子さん(バンビの会副会長)から、家族会が担う患者家族の精神的問題について、これまでの体験談のご紹介がありました。そのひとつのエピソードで幸家との出会いのお話をしていただき、はじめてお会いして心の救いとなった5年前を思い出しました。先日のJPAの研修会でも感じた家族会に求められるものは「ピアカウンセリング」に近いとこの精神的ケアであることに通ずるものがあると感じました。その後の質疑応答の時間で近藤先生から指名されてしまい(>_<)少しお話させていただきました!
森藤香奈子先生(長崎大学医学部保健学科)から「ダウン症患者のきょうだいの心理的特徴」についての調査結果発表がありました。非常に興味深い内容でした。この結果というのは、ダウン症以外の場合にも適用されると思いました。「きょうだい」は、親の患者本人への行動や言動をよく見ていて、良くも悪くも価値観形成に影響される。実は親以上に患者本人のことを冷静に判断していて、将来どう関わっていくべきかを深く考えていることを知りました。どの親もきょうだいには、自分の人生を歩んで欲しいと思っている反面、血のつながったきょうだいだからこそ仲良く、できる限り寄り添ってほしいとの葛藤を抱えているものと思います。答えはありませんが、それを決めるのは「きょうだい自身」であり、それを判断する価値観は『両親の患者本人への関わり方と、きょうだいへの関わり方』が大きく作用するのだと思いました。
第2部:どう対応したら良いか
第1部の内容を受けて、遺伝カウンセラー、臨床心理士、精神科医の立場からこれまでのご経験に基づいお話がありました。ひとつ注目したのは「家族が鬱になること」でした。介護負担、社会との壁、将来への不安、その他精神的不安要素は山ほどあるなかで、家族=親が鬱になることが少くないということです。(厚労省発表では全人口あたり15人に1人) 先日のJPA研修会で伺いましたが、難病を罹患された本人・ご家族の自殺や心中の話は少し前までは少なく無かったとのこと。患者のQOLを向上させるのは社会の課題との認識はある程度されてるかもしれませんが、その根幹の「家庭や家族全体」が健全であることが先ずは重要なことであり、何をするにも大前提として求められるものではないかと感じました。
第3部:総合討論
会場から活発な意見&相談事が多数出ていましたが、そのなかで一番考えさせられた質問内容は「患者本人へ自分の病気=ダウン症候群をどのように伝えたらよいか?」ということでした。知的のハンデがそれほどない場合かもしれませんが、学校の先生に「自分の病気のことで将来きょうだいに迷惑をかけるのではないか?」と悩みを打ち明けていたとのことです。ご両親としては、ご家庭では気付かれなかったとのことで、あらためてダウン症候群の方たちが“やさしい”と言われるゆえんが分かった気がいたしました。
それに関して近藤先生からは、まず「ダウン症候群は病気ではない」そして「障害・ハンデとなってるものは合併症である」というお話がありました。このお話は今まで私も一般的に言われる染色体異常(重複や欠失や転座やリングなど)自体は病気ではないのではないか?という違和感と通じます。1q重複も患者毎に症状の重い軽いがバラバラですので、構造的に「一番染色体の長腕部分重複」であって合併症の種類や重さはまた別問題と考えたほうがしっくりきます。ただ、臨床的にどのような合併症が起こりうるかということを明確にすることで、治療や予防に役立ちますので、「・・・症候群」として体系的な言い方をしますが、患者個人の状況はそれぞれ違うという事実を伝えることが重要なのだと思いました。
また、以前近藤先生に聞いたことがあますが、「コピーナンバーバリエーション」という考えを持つともう少し理解が広がります。遺伝子レベルでの数の過不足は誰にでもあり(健常者も含め)、その数的異常が重大な合併症として表現するか、性格的な特徴として表現するか、何も表現しないのかはよく分からないということです。
また、どのタイミングで患者本人にお話しするべきか?に関しては、7才以上が良いのではないかとのことでした。そこらへんにかんしては、「インフォームドアセント」とい概念もあり、小児患者への医療的な情報伝達の方法や時期の考えも、私たち親の立場でも勉強しておいたほうが良いとかんじました。当然、患者家族会としても何かそこらへんを分かりやすくお伝えすることが出来ればいいなぁと思いました。
総じて、今回のフォーラムはいつもの雰囲気(専門的なテーマ)と違いとても身近なテーマであり、「自分の家庭ではどうだろう?」と考えながら一日聞くことができました。恐らくダウン症以外の患者家族にとっても有意義で充実したフォーラムだったと思います。
1q会員の皆さまはじめ興味を持たれている皆さまにも是非考えていただきたく思いましたので、見難いですが少し長めのレポートとなりました。
最後に会場で、みさかえの園の福田雅文センター長さまともお話することがができました。一昨年のプロジェクトで、近藤先生への全面協力をしていただけた感謝の気持ちを伝えることができました。
一緒に連れて行きました奏汰も一日中保育の方々のおかげで楽しく遊んべたようで、帰りの車中でもハイテンションでした^^ おかげさまで、公演は全プログラム集中してきくことができました。
このフォーラム開催にご尽力された長崎大学医学部の皆さま、バンビの会の皆さま、保育を担当してくださったボランティアの皆さまに感謝申し上げます。
皆さま本当にお疲れさまでした。
PS.
ご出席されていました、近藤達郎先生と渡辺聡先生へ、1q家族会として20日に行われる交流会ご出席のあらためてのお願いもしてきました^^
2月20日は西宮市でお待ちしております。よろしくお願いいたします。